退職届の完全ガイド｜正しい書き方・提出手順・円満退職のポイントを徹底解説

退職願・退職届・辞表の違いと使い分け

退職に関する書類は似ているようで役割や提出のタイミングが異なります。誤った使い方をすると手続きがやり直しになったり、会社との関係に影響が出ることもありますので、それぞれの違いを正しく理解しておくことが重要です。

退職願

退職願は、まだ退職が正式に決まっていない段階で「退職したい」という意思を会社に伝えるための書類です。あくまで打診段階のため、上司や人事の承認前であれば撤回できる可能性があります。通常は直属の上司に提出し、その後の話し合いで退職日や条件が決まります。

退職届

退職届は、退職が会社に承認された後に提出する正式な書類です。この提出によって労働契約の終了が確定します。原則として撤回はできず、提出のタイミングや提出先は就業規則に定められている場合があります。自己都合退職では「一身上の都合により」と記載しますが、会社都合退職の場合は具体的な理由を記載する必要があります。

辞表

辞表は、社長・取締役などの経営層や公務員など、雇用契約ではなく職務上の地位を持つ人がその職を辞する際に提出する書類です。経営層の場合は役職のみ辞めるケースや、退職を伴うケースがあります。一般社員には通常不要です。

使い分けの目安

• 退職を相談・打診する段階 … 退職願
• 退職が承認され確定した段階 … 退職届
• 経営層や公務員など特定の立場 … 辞表

まずは「どの立場で」「どの段階か」を整理して書類を選ぶことじゃ。そうすれば余計なトラブルや手戻りを防ぎ、退職手続きもスムーズに進むぞ

退職届を作成する前に必ず確認すべきこと

退職届は一度提出すると原則として撤回できない重要な書類です。作成前に必要な確認を怠ると、退職日や条件で不利益を受ける可能性があります。以下のポイントを事前に押さえておきましょう。

就業規則・社内規定の確認

• 提出期限：多くの会社では「退職希望日の1〜2カ月前までに提出」と規定していますが、会社ごとに期間が異なります。
• 提出先の指定：直属の上司経由で人事部へ提出する、または代表取締役宛てに直接提出など、会社によってルールが異なります。
• 提出方法：手渡し限定、郵送可、電子申請可などの規定を確認します。

退職理由の記載ルール

• 自己都合退職：一般的には「一身上の都合」と記載します。
• 会社都合退職：事業縮小や契約終了など、会社と合意した具体的な理由を明記します。誤って「一身上の都合」と記載すると、失業保険の受給条件が不利になる可能性があります。

提出方法とマナー

• 直接面談の場で提出：基本は人目の少ない場所で直属の上司に直接手渡しします。
• 郵送の場合：宛名・差出人・封筒の書き方は会社の規定や一般的マナーに沿って行います。
• メール提出の可否：規定がない場合でも、正式書類は原本提出が望ましいです。

退職日とスケジュール調整

• 有給休暇消化、賞与支給日、プロジェクトの引き継ぎ時期を踏まえて退職日を設定します。
• 業務の繁忙期や取引先対応など、ビジネス上の影響も考慮して日程を決定します。

契約内容・雇用形態別の注意点

• 正社員、契約社員、派遣社員など、雇用形態によって退職手続きの流れや必要書類が異なります。
• 営業職や顧客対応職では、契約先や取引先への引き継ぎ方法を事前に整理しておくことが重要です。

退職届は“書いてから”ではなく“書く前”の準備が勝負どころじゃ。ルールを確認し、日程や理由を戦略的に固めてから動けば、退職後のトラブルをほぼ回避できるぞ

退職届の正しい書き方と例文

退職届は、退職が正式に決定した後に提出する公的な書類です。内容や形式に不備があると、再提出を求められたり、誤った理由で処理されてしまう可能性があります。以下では、形式ごとの必須要素と注意点、自己都合・会社都合それぞれの例文を解説します。

基本構成と必須項目

1. タイトル

• 用紙の中央上部に「退職届」と明記
• 縦書き・横書きいずれも可能ですが、会社の慣例に合わせる

1. 書き出し

• 本文冒頭に「私儀」または「私事」と記載
• 「私儀」は縦書き文書でよく使われる

1. 退職理由

• 自己都合退職：「一身上の都合により」
• 会社都合退職：「事業縮小のため」「早期退職合意に基づき」など具体的に記載
  ※会社都合なのに「一身上の都合」と書くと失業保険の条件に影響する場合があります

1. 退職日

• 上司との合意後に確定した日付を記載
• 西暦・元号は会社書式に合わせ統一する

1. 結びの文

• 自己都合：「退職いたしたく、ここにお願い申し上げます」
• 会社都合：「退職いたします」と事実を報告

1. 提出日

• 実際に提出する年月日を明記

1. 所属・氏名・押印

• 所属部署名、氏名（フルネーム）を記載し、認印または実印で押印
  ※シャチハタは不可

1. 宛名

• 会社の代表者名と役職（例：代表取締役社長 ○○○○ 殿）
  自分の署名よりも上に配置する

自己都合退職の例文（縦書き）

退職届

私儀
このたび、一身上の都合により、
令和七年三月三十一日をもって退職いたしたく、
ここにお願い申し上げます。

令和七年二月一日
営業部　第一営業課
山田　太郎　㊞

株式会社サンプル
代表取締役社長　佐藤　一郎　殿

会社都合退職の例文（横書き）

退職届

私事
このたび、事業部門縮小に伴い、
2025年3月31日をもって退職いたします。

2025年2月1日
営業本部 法人営業部
山田 太郎　㊞

株式会社サンプル
代表取締役社長　佐藤 一郎 殿

書式のポイント

• 紙質・サイズ：白無地便箋（B5またはA4）、罫線入り可
• 筆記具：黒インクのボールペンまたは万年筆（消えるペン不可）
• 日付の数字：縦書きは漢数字（例：令和七年三月三十一日）、横書きは算用数字（例：2025年3月31日）
• 封筒：白無地・郵便枠なし（長形4号または長形3号）、表面に「退職届」と記載

しっかり形式を守れば、提出時に余計なやり取りを減らせますよ。特に理由欄は自己都合と会社都合で書き分けるのが大事です

便箋・封筒・筆記具の選び方と封入方法

便箋の選び方

退職届は公的かつフォーマルな書類のため、便箋は以下の条件を満たすものを選びます。

• 色：無地の白色
• サイズ：B5が一般的。社内規定や指定がない場合はA4でも可
• 罫線：あってもなくても可。ただし、派手なデザインや色付き罫線は避け、ビジネス用のシンプルなものを選択
• 質感：厚みがあり、インクがにじみにくい上質紙が望ましい

社内で横書き書類が主流ならA4横書き、縦書き文化が根強い場合はB5縦書きが自然です。

封筒の選び方

便箋を清潔かつ丁寧に渡すため、封筒にも配慮が必要です。

• 色と柄：白無地（郵便番号枠なし）
• サイズ：B5便箋は「長形4号」、A4便箋は「長形3号」
• 紙質：便箋の形が透けない厚みのあるものを選択
• 宛名の書き方：
• 表面中央に「退職届」と楷書で記入
• 裏面左下に所属部署と氏名をフルネームで記入

※茶封筒やカラー封筒はビジネス書類として不適切です。

筆記具の選び方

長期間保存される可能性があるため、消えない筆記具を使用します。

• 種類：黒のボールペン（油性推奨）または万年筆
• 注意点：フリクションペンなど消えるインクは絶対に使用しない
• 筆跡：かすれやにじみがないよう、一定の筆圧で丁寧に書く

封入方法

1. 便箋の折り方

• 縦書きの場合：便箋の上部が最後に上にくるよう三つ折り
• 横書きの場合：横方向で三つ折りし、表紙部分が上にくるように折る

1. 封筒への入れ方

• 便箋の上部（本文の冒頭）が封筒の裏面の上側にくるよう封入
• 封をしたら、封入口中央に「〆」と記載

1. 提出前の確認

• 封筒の汚れや折れがないか確認
• 封の糊付けが甘くないか、筆跡が薄れていないかをチェック

便箋・封筒・筆記具は、退職届の印象を左右する重要な要素じゃ。どんなに文章が正しくても、見た目の清潔感や書面の整い具合が欠けておると評価が下がるぞい。品のある選び方と丁寧な封入で、最後まで誠意を伝えることが肝心じゃ

退職届提出から退職日までのスケジュール

提出後すぐに行うべき準備

退職届を提出したら、まず直属の上司と提出内容の確認とスケジュール調整を行います。提出日に退職日が確定しない場合、曖昧なまま進めると引き継ぎや予定調整で混乱が生じやすくなります。

引き継ぎ計画の明確化と実行

IT・営業の現場では、顧客対応や案件情報が複雑に絡み合っていることが多いです。早期に以下を整理しましょう。

• 担当顧客／プロジェクト一覧の作成
• 引き継ぎ相手の明確化と相談
• 完了までのタスク期限設定
• ドキュメントやマニュアル化すべき業務の整理

これにより、後任もスムーズに業務を引き継げ、信頼を損ねません。

社内および取引先への案内タイミング

• 社内への共有は最終出社日の数日前に。上司や関係部署と相談の上、メールや口頭で「感謝」と「引き継ぎ完了の報告」を兼ねた挨拶を丁寧に行います。
• 取引先への案内は、引き継ぎ対応が確実に整っていることを確認した上で、退職予定日から逆算し2～3週間前を目安に行います。

有給休暇・ボーナス・退職金の調整

有給消化の申請時期や残日数、ボーナス支給日や支給要件を早めに人事に確認しましょう。退職日調整を工夫すれば、退職後の金銭的な損失を避けられます。

最終出社日の設定と準備

最終出社日が決まったら、以下を確認・対応します。

• 関係資料や貸与物の返却
• 離職票や源泉徴収票など必要書類の受領スケジュール
• 引き継ぎ済み確認のためのミーティングを上司と設定
• メール署名や社内システムのアクセス解除など、事務的な対応

退職届を出した後すぐにスケジュールを確定し、引き継ぎ→社内外への挨拶→有給・金銭面の調整→最終出社の確認と準備が大切、という流れで進めていくのがポイントですよ

トラブル回避と円満退職のための交渉術

退職届の提出は形式的な作業に見えますが、その前後のやり取りによって、退職後の人間関係やキャリアへの影響が大きく変わります。ここでは、不要な摩擦を避け、ビジネスパーソンとしての信頼を損なわずに退職を進めるための交渉術を解説します。

直属上司との面談の進め方

• 事前にアポを取り、落ち着いた環境で話す
  デスク横や休憩中などのカジュアルな場ではなく、会議室や応接室など第三者の目が届かない場所を確保します。
• 事実と感謝をセットで伝える
  退職理由は簡潔かつ前向きな表現にとどめ、在籍中の支援や経験への感謝を添えると、相手の感情的反発を和らげられます。
• 退職希望日と引き継ぎ計画を同時に提示
  日程と具体的な引き継ぎ方法を示すことで、相手に「混乱なく進められる」という安心感を与えます。

引き止められた場合の対応方法

• 軸をぶらさず冷静に対応
  条件改善や部署異動などの提案を受けても、退職の意思が固まっている場合は一貫した姿勢を保ちます。
• 感情的な否定は避ける
  「それは考えていません」ではなく、「ありがたいご提案ですが、既に次のステップを決めております」と丁寧に伝えます。
• 交渉のゴールを明確に
  「円満退職」を目的とし、相手を説得する場ではなく合意形成の場として進めます。

受理されない場合のエスカレーション手順

1. 直属上司に再確認
   「提出期限や形式に不備がないか」を確認し、再度受理を依頼します。
2. 上位上司へ相談
   上司が長期不在、または明確な拒否姿勢を示す場合は、直属上司のさらに上の上司へ事情を説明します。
3. 人事部・総務部への正式依頼
   業務上の決裁ルートを踏み、就業規則に沿って受理を求めます。記録としてメールや書面で経緯を残すことも有効です。
4. 最終手段として法的権利の確認
   民法第627条第1項に基づき、申し出から2週間後に労働契約は終了する旨を理解しておき、必要であれば労働基準監督署や専門家へ相談します。

ビジネス職特有の注意点

• 取引先・顧客との関係維持
  引き継ぎリストや進行中案件の現状報告を整備し、相手先にもスムーズに担当交代を告知します。
• 営業データや顧客情報の管理
  個人のPCや私物端末に業務データを残さず、社内規定に従い返却・削除を完了させます。
• 退職日までのパフォーマンス維持
  最終日まで業務品質を保つことで、退職後も信頼を残せます。

交渉は相手を言い負かす場ではなく、共に最善の着地点を探す場です。感情に流されず、準備と配慮をもって臨めば、退職は円満に進みますよ

退職後に必要な事務手続きと受け取る書類

退職が成立した後も、社会保険・税金・雇用保険などの事務手続きは必ず発生します。これらを正しく進めることで、再就職や生活の安定に直結します。ここでは退職後に必要な主要手続きと受け取る書類、スムーズに進めるためのポイントを解説します。

退職後に受け取るべき主要書類

雇用保険被保険者証

• 雇用保険の加入履歴を証明する書類
• 次の勤務先に提出し、雇用保険の継続加入に使用
• 会社から退職時または退職後に返却されます

源泉徴収票

• 年間の給与や源泉徴収された税額が記載
• 確定申告や再就職先での年末調整に必要
• 退職後1か月以内の発行が一般的ですが、遅れる場合は人事・総務に依頼

離職票（1・2）

• ハローワークで失業給付を申請する際に必要
• 退職後10日〜2週間程度で会社から郵送されることが多い
• 会社に事前請求しないと発行されないケースもあるため要確認

退職後に行うべき主な手続き

健康保険

• 任意継続：退職前の健康保険を最長2年間継続可能（申請は退職後20日以内）
• 国民健康保険：市区町村役場で加入手続き（退職後14日以内）
• 再就職までの期間や保険料を比較して選択

年金

• 国民年金への切替：第2号被保険者（会社員）から第1号被保険者（自営業・無職）へ変更
• 退職後14日以内に市区町村役場で手続き

住民税・所得税

• 住民税は退職時に一括徴収か、退職後に納付書で支払う
• 所得税は源泉徴収票をもとに確定申告または年末調整

失業給付・再就職手当の申請

失業給付（基本手当）

• 受給条件：就職意思があり、かつ求職活動を行っていること
• 手続き：離職票・雇用保険被保険者証を持参し、ハローワークで求職申込み
• 待機期間：7日間＋自己都合退職の場合は2か月程度の給付制限期間あり

再就職手当

• 失業給付の受給資格がある人が早期に再就職した場合に支給
• 受給条件や支給額は再就職時期・残日数によって異なる

スムーズに進めるためのチェックポイント

1. 退職前に必要書類の受取日を人事・総務に確認
2. 健康保険・年金・雇用保険の切替期限を把握し、カレンダーに登録
3. 離職票は失業給付申請に必須のため、発行依頼を忘れない
4. 次の就職先が決まっている場合は、雇用保険や年金の切替が簡略化される場合がある

退職後は“やることリスト”を作って期限順に片付けるのがコツじゃ。健康保険や年金は申請期限が短いから、のんびりしておると損をするぞ。特に離職票の取り寄せは早めに動くんじゃぞ