格安SIMのデータ通信は本当に遅い？選び方・速度・節約術を

格安SIMのデータ通信はなぜ安い？仕組みを理解する

MNOとMVNOの違い

MNOは自前の通信設備（基地局や回線）を持つドコモ・au・ソフトバンク・楽天モバイルなどの大手キャリアを指します。一方、MVNOはこれらのMNOから回線を借り受け、独自の料金プランを設定してユーザーにサービスを提供します。設備投資が不要なため、料金を大幅に抑えることが可能です。

回線を借りて運用する仕組み

MVNOはMNOから「帯域」を一括で仕入れ、その帯域内でユーザーにデータ通信サービスを提供しています。たとえば、ドコモ回線を利用するIIJmioやOCNモバイルなどがその代表例です。設備管理・保守のコストをMNO側に任せることで、MVNOはコストを抑えた運営ができます。

通信速度と時間帯の関係

格安SIMの通信速度が不安定になる理由のひとつが「帯域の分配方法」にあります。MVNOが借りている帯域は限られており、特に12時台の昼休みや18時以降の帰宅時間帯には多くのユーザーが通信を行うため、混雑が発生します。この時間帯は帯域が飽和し、通信速度が著しく低下する傾向があります。

また、MVNOごとに借り受けている帯域の広さが異なるため、同じドコモ回線を使っていても、IIJmioとmineoで速度に違いが出ることも珍しくありません。

安さの背景にあるビジネスモデル

格安SIMが安価に提供できる最大の理由は、徹底したコスト削減にあります。設備費や販売店の維持費を抑えるほか、サポートをオンラインに限定することで人件費も削減しています。また、広告費を最小限に抑えたり、通信料の従量課金制を導入したりと、あらゆるコスト削減策を講じています。

このように、格安SIMの安さは「質が劣る」からではなく、「仕組みの違い」によるものです。通信の質や速度に差があるのは事実ですが、用途に合ったSIMを選べば、月額料金を抑えながら十分に満足できる通信環境を構築することができます。

格安SIMのデータ通信速度を徹底比較

格安SIMの通信速度は、選ぶ会社や利用時間帯によって大きく異なります。特に昼の12時〜13時や夕方の18時〜20時など、多くのユーザーが利用する時間帯では通信が混雑し、速度が大幅に低下する傾向があります。このセクションでは、主要13社の通信速度を実測データに基づいて比較し、通信品質を重視するユーザーがどのSIMを選ぶべきかを明確にします。

主要13社の実測通信速度（2025年6月）

以下は、朝・昼・夜の時間帯ごとに計測された実測平均速度です。単位はMbpsです。

※2025年6月、Speedtestおよび各種レビューサイトを基に平均化した値です。

通信速度で選ぶならこの格安SIM

通信速度を重視したい場合のおすすめは以下の通りです。

• UQモバイル・ワイモバイル・LINEMO・povo
  → 昼間でも安定した速度が出るため、Web閲覧・動画視聴・Zoomなどの利用にも十分対応可能です。
  → 通信速度にこだわるなら、キャリアサブブランドが有力です。
• mineo・IIJmio・OCNモバイル
  → 昼間は大きく速度が落ちるため、メールや軽めのSNS用途に適しています。
  → 月額料金を抑えて節約したいライトユーザー向けです。
• 楽天モバイル
  → 自社回線の拡大により改善傾向にあるものの、建物内や地下では不安定になるケースがあります。

回線タイプ別の傾向

• ドコモ回線（IIJmio・OCNモバイルなど）：人口カバー率は高いものの、MVNO帯域が限られるため混雑に弱いです。
• au回線（UQ・povo・mineoなど）：サブブランドは特に高速。MVNOは昼間の低速がネックです。
• ソフトバンク回線（ワイモバイル・LINEMOなど）：安定性とスピードのバランスが良好です。

利用シーン別おすすめ

• 動画視聴・リモート会議中心：UQモバイル、LINEMO、ワイモバイル
• SNS・軽いブラウジング：IIJmio、mineo、OCNモバイル
• 価格と速度のバランス：楽天モバイル、povo

格安SIMでも快適な通信環境を実現するためには、速度だけでなく利用時間帯や用途を加味した選び方が重要です。通信品質を妥協したくない場合は、月額料金がやや高くてもサブブランド系SIMを選ぶのが安全です。

データ通信が遅いときの原因と対処法

通信混雑による速度低下

格安SIMでは、大手キャリア（ドコモ・au・ソフトバンク）の回線を間借りしているため、利用者が多い時間帯には通信帯域が混雑しやすくなります。特に昼の12時〜13時、夕方の18時〜20時は速度が著しく低下する傾向があります。

対処法

• 混雑時間帯を避ける（SNSや動画視聴は早朝・深夜が比較的快適）
• 混雑耐性が強いブランド（例：UQモバイルやワイモバイル）へ乗り換えを検討する

通信制限の影響

多くの格安SIMでは、一定の通信容量を超えると速度制限がかかります。例えば、月3GBプランで3GBを超えた場合、200kbps以下に制限され、ほとんどのアプリが正常に動作しません。

対処法

• 契約中のプランで制限がかかっていないか確認
• データ残量を確認できる専用アプリを活用（例：mineoアプリ、IIJmioクーポン残量表示など）
• よく使う月は上位プランに一時的に変更する

スマホ端末や設定の問題

APN設定の誤り、省データモード、OSの不具合などが原因で通信速度が出ないケースもあります。

確認すべきポイント

• APN設定が正しいか：初期設定ミスやプロファイルの競合が原因で通信が不安定になることがあります
• 省データモードや節電設定：一部の端末ではバックグラウンド通信を制限する機能が影響している場合があります
• OSやアプリの不具合：OSアップデートやアプリの不具合により、通信が遅くなるケースもあるため定期的な更新が重要です

対処法

• APN設定を公式サイトの情報と照合して再設定
• 節電系アプリやモードを一時的にオフ
• 不要なプロファイルやVPNを削除

通信を安定させるテクニック

物理的なSIMや端末の不具合も考慮し、以下の基本的な対策を試すことで改善するケースがあります。

基本的な対処法

• スマホ本体を再起動する
• SIMカードを一度抜いて再挿入する（端子の接触不良対策）
• 機内モードをオン・オフして通信をリセット
• 別の場所で通信テストを行い、電波状況を確認

最後に確認すべきこと

通信が著しく遅い状態が長期間続く場合、以下のようなケースも考えられます。

• 利用しているMVNOが特定エリアでの帯域確保が不十分
• 古い端末のLTEバンド未対応
• SIMカードの劣化

これらに該当する場合は、より品質の高い格安SIMへの乗り換えや、対応バンドが広いスマホへの機種変更も視野に入れると良いでしょう。

データ通信を快適に使うためのSIMプラン選び方

スマホで快適にデータ通信を利用するには、単に月額料金が安いだけでなく、利用目的や時間帯によって適したプランを選ぶことが重要です。通信トラブルを避けたい方は、以下の基準でSIMプランを見直してみてください。

使用目的に合ったデータ容量を選ぶ

データ容量は、用途に応じて適正なプランを選ぶことが快適さの第一歩です。

多くのユーザーが契約しているのは3〜10GBの中容量プランです。余計な容量を契約して料金が無駄にならないよう、まずは自分の月間通信量を確認しましょう。

通信速度と時間帯の快適さを確認する

格安SIMの多くは、平日昼12時台や夕方以降に通信速度が低下しがちです。動画視聴やオンライン会議が多い方は、時間帯による速度差が小さいSIMを選ぶのがポイントです。

速度重視の方におすすめの格安SIM。

• UQモバイル：au回線を使用し、昼も安定した速度を確保
• ワイモバイル：ソフトバンク回線直結で高速通信に強い
• 楽天モバイル：楽天回線エリア内なら速度制限なしで無制限利用が可能

速度に妥協できるサブ用途（予備スマホやサブ回線）であれば、mineoやIIJmioなどコストパフォーマンスに優れたSIMも選択肢に入ります。

プラン選びの注意点

• 1GB未満でも最低料金が高いプランに注意：例えば、UQモバイルやワイモバイルは通信品質が高い反面、月額料金が他社よりやや高めに設定されています。
• 速度制限後の利用環境も確認する：低速モード（200kbpsや300kbps）での使い勝手や、バースト転送機能の有無も見ておきましょう。
• 通信制限の条件を事前にチェック：「3日間で〇GB以上利用で制限」などの隠れた条件がある場合があります。

料金以外にも注目すべきポイント

• 契約期間や解約金の有無：短期利用を予定している場合は縛りなしプランがおすすめです。
• サポート体制の有無：通信に不安のある方は、店舗サポートのあるワイモバイルやUQモバイルが安心です。
• eSIM対応：サブ回線利用やデュアルSIM機能を活用するなら、eSIMに対応したMVNOを選ぶと利便性が高まります。

快適な通信を実現するには、データ容量・通信速度・契約条件をトータルで見て、自分の利用スタイルに合ったプランを選ぶことが不可欠です。プランを比較する際は、実測データや評判など客観的な情報を活用しましょう。

大容量通信におすすめの格安SIMと注意点

20GB以上のデータ通信を安定して使いたい場合、選択肢は限られます。通信速度や使い放題の制限内容を正しく理解しないと、かえって不便になるケースもあります。大容量プランに強い格安SIMを整理しつつ、契約前に確認すべき注意点を解説します。

20GB以上の格安SIMで選ばれているサービス

LINEMOは大容量ユーザーに非常に人気で、20GBというボリュームに加え、ソフトバンク本家と同等の回線品質が魅力です。楽天モバイルは無制限利用ができる反面、エリアによって速度差があり、都市部ユーザー向けです。

無制限・使い放題プランの落とし穴

「無制限」や「使い放題」をうたうプランでも、実際には帯域制限や速度制御がかかるケースがあります。

• 楽天モバイル：楽天回線エリア外では月5GBを超えると最大1Mbps
• mineoのパケット放題Plus：最大1.5Mbpsに制限（平日昼12時台は制限あり）
• NUROモバイルのNEOプランW：データ量合計40GBで使い切ると速度制限

これらの制限があると、動画視聴やテザリング利用には不向きになるため、契約前に「実質どこまで使えるか」を確認することが重要です。

テザリング利用時の注意点

大容量プランを選ぶ理由の1つが、PCやタブレットと接続して使う「テザリング」用途です。しかし、以下の点に注意が必要です。

• 一部SIMではテザリング非対応：特に海外系MVNOや独自プランでは使えない場合がある
• 速度制御の対象になりやすい：YouTube・Zoomなどは帯域優先度が下がることがある
• バッテリー消費が激しい：長時間利用を前提とするならモバイルバッテリーも準備を

テザリング中心の使い方を想定している場合、通信量だけでなく安定性・接続上限・端末対応可否もあわせて確認してください。

安さだけで選ばない！目的別の最適解

• 動画・オンライン会議がメイン：LINEMO（20GB）やUQモバイルの増量プラン
• コスパ優先で月30GB前後使いたい：日本通信SIMやNUROモバイルの大容量プラン
• 本気の無制限通信：楽天モバイル（ただしエリア要確認）

料金の安さに注目しがちですが、通信の快適さ・時間帯ごとの速度・エリア対応状況もセットで検討しないと、日常利用に支障が出るおそれがあります。長時間の利用が前提となる大容量ユーザーは、「理論上のデータ容量」ではなく「実運用での使いやすさ」を基準にSIMを選びましょう。

格安SIM×光回線・Wi-Fiと組み合わせて通信費を下げる

格安SIMの最大の魅力は月額料金の安さですが、通信容量に制限があるため、使い方次第では快適さを損なうこともあります。そこで、自宅のインターネット回線やWi-Fiと組み合わせることで、通信費を抑えながら快適なネット環境を実現する方法を紹介します。

自宅では光回線＋格安SIMの組み合わせが最強

自宅で動画視聴やリモートワークを行うなら、通信速度と安定性に優れた光回線がおすすめです。格安SIMのデータ通信はあくまで外出時に使い、自宅ではWi-Fiに接続することで、月間データ容量を節約できます。とくにテザリングを頻繁に使う必要がある方は、自宅用インターネット環境をしっかり整えることが通信費削減に直結します。

光回線の中でも、NURO光、ドコモ光、auひかり、ソフトバンク光などはキャンペーンが豊富で、月額料金を抑えられるうえ、スマホとのセット割引にも対応しているため、通信費全体の節約につながります。

モバイルWi-Fiやホームルーターとの併用で柔軟性アップ

外出先でも動画や資料のやり取りをする機会が多い方は、モバイルWi-Fiやホームルーターの併用も検討の価値があります。特に、通信量が多い月が不定期にある方には、容量無制限のモバイルWi-Fiを一時的に契約することで、格安SIMの通信制限によるストレスを回避できます。

WiMAXやソフトバンクエアー、楽天ターボといったホームルーターは、固定回線が引けない物件でも使えるため、賃貸や転勤が多い方にも向いています。短期契約が可能なサービスを選べば、必要な期間だけ利用することができ、無駄な出費も抑えられます。

家族での契約やシェアプランを活用してコストダウン

家族全員で格安SIMを利用する場合、IIJmioやmineoの「ファミリープラン」や「パケットシェアプラン」を活用すれば、通信容量の無駄を防げます。使わなかった分のデータを翌月に繰り越したり、家族間で分け合えるプランを選ぶことで、余計な追加チャージが不要になります。

さらに、光回線とスマホをセットで契約することで、1回線あたり毎月550円〜1,650円の割引が受けられる「おうち割光セット」や「ドコモセット割」などの割引制度もあります。家族3人以上で適用すれば、年間で数万円の通信費削減が可能です。

通信費を抑えるポイントまとめ

• 自宅は光回線＋Wi-Fi、外出先は格安SIMで使い分ける
• 大容量通信が必要な月はモバイルWi-Fiで補完
• 家族利用はシェアプランとセット割を最大限活用

通信費を削減しながらもストレスなくインターネットを使い続けるには、「使い方に合わせてインフラを組み合わせる」ことが鍵となります。生活スタイルに合わせた最適な回線構成を選ぶことで、格安SIMのメリットを最大限活かせます。

よくある質問と回答｜データ通信トラブル・使い方Q\&A

通信速度が遅くなるのはいつ？どうすれば改善できる？
平日12時〜13時、18時〜21時は通信が混雑しやすく、速度が低下する傾向があります。改善策としては以下の方法が効果的です。

• 通信量の多い時間帯を避けて利用する
• データ節約モードやプロファイルの見直し
• APN設定が正しく適用されているか確認する
• SIMカードの抜き差し・端末再起動
• 電波の良い場所へ移動（屋内なら窓際推奨）

eSIMにすると通信品質は変わる？
eSIMは物理SIMと同じネットワークを利用するため、通信品質自体に違いはありません。ただし、初期設定や回線切り替え時のAPN自動設定がうまくいかないことがあり、設定ミスによって通信トラブルが発生するケースがあります。APN設定の確認と、再構成ができる状態にしておくことが重要です。

速度制限後でも何ができる？どの程度の速度？
多くの格安SIMでは速度制限後に200kbps〜1Mbpsに低下します。主な利用可能な内容は以下の通りです。

アプリの自動更新や画像の多いサイト閲覧は困難になるため、Wi-Fi併用や節約モード切替機能のあるSIMを活用してください。

キャリアメールは使える？どう設定する？
格安SIMの多くは「キャリアメール（@docomo.ne.jpなど）」を提供していません。ただし以下の方法があります。

• メールアドレス移行（持ち運び）：大手キャリアで有料（月額330円程度）で継続可能
• 代替手段：GmailやYahoo!メールなどのフリーメールを利用

重要な登録先（銀行・行政等）には、フリーメールへの変更を事前に済ませておくとトラブルを防げます。

テザリングはできる？注意点は？
ほとんどの格安SIMでテザリング利用は可能ですが、以下の点に注意してください。

• iPhoneはAPN設定によりテザリングが使えない場合がある
• データ消費が多く、速度制限に達しやすい
• 一部プランではテザリング非対応（特に無制限系）

事前にテザリング対応可否を確認し、APN構成プロファイルを再設定することで解消するケースもあります。

APN設定がうまくいかない場合はどうすればいい？
以下の基本確認を行ってください。

1. プロファイルが古い・他社のものになっていないか
2. モバイルデータ通信がオンになっているか
3. iOS/Androidバージョンが最新か確認
4. 手動でAPN情報（名前/APN/ユーザー名/パスワード等）を再入力する

公式サイトの最新設定情報を参照し、適用後は端末再起動を必ず行ってください。改善しない場合はサポート窓口へ連絡しましょう。

まとめ｜格安SIMでも快適なデータ通信は可能

格安SIMでも快適にデータ通信を行うためには、「プランの選び方」と「通信環境の整備」が鍵となります。まず、自身の通信量や利用時間帯を把握し、それに適したMVNOやサブブランドを選ぶことが重要です。通信速度の安定性を重視する場合はUQモバイルやワイモバイル、コスト重視ならIIJmioやmineoが有力な選択肢です。

通信品質の差は、APN設定のミスや端末側の省電力モードが原因であるケースも多く、初期設定や見直しだけで改善する場合があります。また、混雑する時間帯を避ける、テザリング時は速度制限を意識するなどの使い方の工夫も効果的です。

さらに、自宅では光回線やWi-Fiと併用することでモバイル通信の負担を軽減でき、データ容量を抑えることが可能です。こうした組み合わせや工夫次第で、格安SIMでも十分に快適な通信環境を構築できます。

格安SIMの魅力は「月額料金の安さ」だけではなく、「自由な選択肢と最適化」ができる点にあります。しっかりと情報を集め、自分に合った選択をすれば、年間数万円の通信費削減も現実的です。安さと快適さを両立するには、計画的なプラン選びと正しい設定が不可欠です。